糖尿病網膜症(とうにょうびょう もうまくしょう)
糖尿病網膜症とは
糖尿病の合併症として、視力障害をひきおこすものに、白内障、血管新生緑内障、そして糖尿病網膜症があります。
網膜には細かい血管(細小血管)が無数に張り巡らさせています。糖尿病では、血液が高血糖のため糖分を多く含み、粘性が強いため、この細小血管をつまらせたり、血管壁に負担をかけ、細小血管症を起こします。そのため、網膜の酸素や栄養が不足してしまい、体はなんとか血液を通して栄養を運ぼうと本来血管のない方向である硝子体などに向けて新生血管を生み出します、しかし、新生血管は生え方もいびつで、血管としての十分な強度ももっていないため、すぐに破れて眼底出血や硝子体出血などの症状を示す網膜症が起こります。
網膜症は進行過程にしたがって、単純網膜症、前増殖網膜症、増殖網膜症の3段階に分けられます。
糖尿病網膜症の3段階
■単純網膜症
糖尿病網膜症の最も初期の段階で、
網膜の細小血管が、高血糖によってもろくなり、血管がつまったり、小さな点状に出血を起こす点状出血や、硬性白斑と呼ばれる血液中の蛋白質や脂肪が染み出してできたシミやが発生します。
自覚症状 |
なし |
治 療 法 |
この段階では、血糖コントロールをよくすると、自然に治癒します。 |
■前増殖網膜症
糖尿病による細小血管症が進行し、血管が詰まることで、神経に血液が届かず、軟性白斑とよばれるシミが発生します。さらに、酸素が行き届かないため、血管が死んでゆき、それを補うために、新生血管を作ろうとし始めます。
自覚症状 |
小 |
治 療 法 |
レーザーによる光凝固術が有効です。 |
■増殖網膜症
いよいよ新生血管が硝子体に伸び、血圧の上昇で新生血管はすぐに破れ、硝子体出血がおこります。さらに新生血管は、網膜の上に増殖膜という薄い膜を形成し、増殖膜によって網膜剥離がおこります。
自覚症状 |
軽度から高度の視力低下、ときに失明 |
治 療 法 |
新生血管の出血で濁った硝子体を吸い出し、ガスを充填し網膜を安定させる硝子体手術を行います。
根治療法ではなく、視力が戻ることはありません。 |
初期の段階では、自覚症状がないため、発見が遅れることが多いのですが、血糖値が高めの中高年の方は、検査を受けられることをおすすめします。
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